高田崇史「QED 式の密室」

QED 式の密室 (講談社ノベルス)

QED 式の密室 (講談社ノベルス)

密室で、遺体となって見つかった「陰陽師の末裔」。“式神”を信じる孫の弓削和哉は他殺説を唱えるが……。果たして、祟の推理は事件を謎解くばかりか、時空を超えて“安倍晴明伝説”の闇を照らし、“式神”の真を射貫き、さらには“鬼の起源”までもを炙(あぶ)り出す。これぞ、紛うことなきQED! 講談社ノベルス創刊20周年記念特別書き下ろし作品!!

「名前」のないものは「存在しない」ということになっている。人間の「認識」の在り方。QEDシリーズの探偵役・桑原崇を通して、繰り返し高田氏が論じていたことが、本作でもキーになっている。なので、本作だけ読んだ人は納得感が薄いかも。講談社ノベルス創刊20周年の「企画モノ」ということで、「企画モノ」と割り引きながら読むのがよろしいかと(とってつけたような密室、少ない枚数(笑))。
人間にとっての「事実」は、「認識」を通さざるを得ないから移ろいゆくものなのだなーと、その儚さにちょっと切なくなったりする。